逮捕容疑では、昨年2月?今年2月、グループが営む新宿区歌舞伎町のバーで、20?30代の男性客5人に「飲み放題5000円」と伝えていたにもかかわらず、10万?33万円の支払いを求めて最大22万円を受け取ったとされる。認否は明らかにしていない。
保安課によると、グループの女性従業員が、マッチングアプリで知り合った男性をバーに誘い込み、飲み放題に含まれない高額な酒を注文していた。
新宿署管内のぼったくり被害は昨年から急増。今年は1?2月だけで約110件の相談があり、被害額は約5900万円に上る。
◆店に誘い込めば「後は簡単」…その手口は
歌舞伎町のぼったくりバーでかつて、男性客をバーに誘い込む仕事をしていたというカフェ店員のミユさん(22)=仮名、板橋区=が本紙に内情を語った。「最低1人8万円支払わせることを目標に組織的に動いていた」と証言。当時の仕事のことは親や友だちに言えないでいるといい、「男性たちに悪いことをした」とつぶやく。(榊原大騎)
「1日6万円ぐらい稼げるし、バーのサクラやってみない?」。ミユさんは高校2年だった2017年、知人の女友達に誘われ、「男性をバーに連れてきて酒を飲ませるだけ」という仕事を始めた。
手口は、まずグループの男たちが出会い系サイトに女性を装って「誰か飲みません?」などと書き込み、メッセージを送ってきた男性と会う約束を取り付ける。ミユさんの出番は歌舞伎町周辺の待ち合わせ場所から。「いい店を知ってるんだ」と誘い込むことができれば「後は簡単」と言う。
店の周辺には監視役として3、4人の男が配置され、ミユさんと男性が飲み始めて程なくすると、仲間の従業員がゲームを勧める。ミユさんが「負けた方が飲もう」と提案し、ひたすら1杯2000円のショットガンを飲み続ける。男性はやがて従業員が促すままにピッチャーまで頼み…。
ミユさんは「会計時に8割の男性が店ともめた」と振り返るが、従業員に「料金は明示してあるので警察に行っても無駄」と言われると最終的に諦めたという。報酬は売り上げの3割。ミユさんは16万円を支払わせたこともあり、多い月は60万円を手にした。
グループを運営していたのは、20代を中心とする十数人の男たち。数カ月ごとに店の場所を変えていたが、リーダー格の男が19年夏、「摘発が増えてきたので今月で終わり」と突然グループを解散させた。
ミユさんが店に案内した男性は2年間で300人。消費者金融に手を出さざるを得なくなった人もいたという。「だましている感覚はあったけど、楽に稼げると思って軽いノリでやってしまった。今はもう、やりたいとは思わない」
東京新聞 2023年4月7日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/242573