税の使いみちを通して、「弱者を生まない社会をつくる」「社会を語ろう、社会を変えよう、身近を革命しよう」と無骨なまでに私たちに迫る学者がいる。慶應義塾大学経済学部教授の井手英策さんだ。彼の提言のベースにあるのは消費税だ。だからずっと批判にさらされてきた。それでも主張を曲げず発言を続ける彼の本意はどこにあるのだろう?衆議院選挙を控え、最新刊『どうせ社会は変えられないなんてだれが言った? ベーシックサービスという革命』を執筆した動機と合わせて井手氏が寄稿した。(中略)■罵詈雑言を浴びても僕は税にこだわるさて。この辺で話をやめる要領のよさがあれば、僕は人気者になれたのかもしれない。でも僕は、「消費税」の話をする。だから左右の挟撃にあう。増税を語ると右からはパヨクと罵られる。バラマキを求め、消費税を忌み嫌う左からは売国奴と断罪される。おまけに、税収を全額暮らしの安心のために使おうというものだから、健全財政主義者からも嫌われる。異端というと聞こえはいいが、「嫌われ者」といったほうが正しいのかもしれない。正直、辛い。でも、罵詈雑言を浴びても僕は税にこだわる。なぜなら、いまを生きる人たちと、未来を生きる人たちとで喜びを分かち合いたいからだ。ベーシックサービスを無償化すれば、17兆円、消費税なら6%程度の財源が必要となる。これをすべて借金でまかなうのなら、もはや予算に上限をはめる理由はない。天井なき予算は「欲望のるつぼ」と化し、財政を急膨張させることを、日本は戦時期に経験している。過去と同様、歯止めのない支出は、将来のインフレを生む。税から逃げたツケは、将来の物価上昇という「見えない増税」となって子どもたちを襲う。そんなリスクがわずかでもあるのなら、僕は税の話から絶対に逃げるわけにいかない。税は、本当に必要なものを話しあう動機を生む。ムダ使いをして将来の子どもたちの負担を増やさないためだ。どの税で、誰が負担するかも論点だ。公正さを欠けば、社会は分裂する。一方、借金で好きなだけバラまく政策なら議論はいらない。だが、人気取りのために、民主主義と子どもたちを犠牲にしてよいはずがない。(中略)僕は弱い立場の人たちとともにありたい。でも、同じ思いの人たちから、「消費税は悪税だ、まずは金持ちに」というお決まりの批判をぶつけられる。でも、待ってほしい。住宅手当さえ作れば、消費税の負担増以上のお金が戻ってくる。それでいいじゃないか。法人税や所得税をあげる案には賛成だ。だけど、消費税1%は、法人税5%、富裕層向け所得税20%に相当する。消費税を外せば、とんでもない増税になる。金持ち憎しじゃなく、みんなで消費税をはらうかわりに、富裕層や大企業にも応分の負担を声高に求めていこう。痛みの分かち合い、連帯の社会をめざすのだ。【プロフィール】井手英策(いで・えいさく)2017年に、民進党前原誠司氏が打ち出した経済社会政策「オールフォーオール(みんながみんなのために)」を支える政策ブレーンとして登場。一躍メディアから注目を集めたが、同年9月に党は3つに分裂。その体験は「学者生命を賭けた戦いに負けた」ものとして刻み込まれた。以後、自身を“敗北者”と呼ぶことも多い。しかし、「『運』で人生が左右される社会を変えたい」との思いからその後も発言をつづけ、2018年には教育、医療介護などの基本的サービスを提供する「ベーシックサービス」を発表。消費税増税の必要性に切り込み、賛否両論を巻き起こす。2020年に公開、ドキュメンタリー映画としては異例のヒットを遂げた『なぜ君は総理大臣になれないのか』(大島新監督)では、希望の党から出馬した小川淳也さん(現立憲民主党)の応援演説に立つシーンが「泣ける」と評判になり、ふたたび注目を集める存在となる。1972年、福岡県久留米市生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。著書に『幸福の増税論――財政はだれのために』(岩波書店)、『欲望の経済を終わらせる』(集英社インターナショナル)、『ふつうに生きるって何? 小学生の僕が考えたみんなの幸せ』(毎日新聞出版)ほか多数。2015年大佛次郎論壇賞、2016年度慶應義塾賞を受賞。
うーん・・・、でも増税や社会保険料アップを続けてきた結果、日本の経済成長はずっと足踏み状態が続いているのでは?
必要なものだとしても景気が回復していないうちに上げるべきものなのかお?