とんかつ・かつ丼の「かつや」などを運営するアークランドサービスホールディングス株式会社(以下、アークランド)の業績が好調だ。
2020年12月期の決算で386億3400万円の売上を記録し、コロナ禍にもかかわらず前年比15.9%の伸びを見せた。
また、営業利益は45億3800万円で同1.2%増、経常利益は48億6800万円で同7.3%増と、軒並み高い数字となった。
2020年、同社の成長を牽引したのが先述の「かつや」と、からあげ専門店の「からやま」「からあげ 縁」だ。
実際、386億3400万円の売上のうち241億2900万円が「かつや」の売上が占めている。
昨年対比で売上は3.7%増加しており、総売上に対する割合は62.5%に及ぶ。
一方で、「からやま」と「からあげ 縁」の売上は84億3800万円となり、総売上に対して21.8%を占めている。
売上は前年対比で17.8%も伸びていて、前年から12億7600万円増加した。
なお、2020年12月期時点で「からやま」は国内107店舗、「からあげ 縁」は30店舗展開している。
そのうち「からやま」の19店舗と「からあげ 縁」の9店舗は2020年にオープンした店だ。
コロナ禍で盛り上がったテイクアウトとデリバリー需要をうまく取り込んだからこそ、好調な売上を記録したといって間違いない。
しかし、「かつや」と「からやま」「からあげ 縁」は、なぜコロナ禍でも好調なのだろうか。それぞれ詳しく分析していこう。
「かつや」の好調の理由を探っていくと、2つの要因を見て取れる。それが「家族層のニーズの取り込み」と「立地戦略」だ。
コロナ禍では営業時間の短縮や席間隔を開けた営業が求められた。その結果、多くの飲食店で客数が減り、売上も激減した。
ただ飲食店の売上は客数と客単価で決まる。理論上は客数が減っても客単価が上がれば売上は減らない。それをやってのけたのが他ならぬ「かつや」だ。
既存店ベースでいうと、「かつや」の2020年の客数は前年比で92.2%だった。しかし客単価は108.6%と伸びたため、売上も100.1%のプラスとなっている。
これに新規出店店舗の売上などを足すと、前述の前年対比3.7%の増加となる計算だ。
客数が減少したのに対して、客単価が上がった現象は通年で起きている。
特に一回目の緊急事態宣言があった4月は客数が前年比で74.7%だったのに対して客単価は前年比120%アップ。
5月は客数が同78.2%に対して、客単価は同124.9%アップした結果、4月の売上は前年対比89.6% 、5月は同97.7%にとどめることができた。
一般社団法人日本フードサービス協会のデータによると、4月の外食全体の売上は39.4%減、5月も32.2%減っている。
いかに「かつや」の数字が突出しているか分かるだろう。
客数が落ちても客単価が上がった要因は、家族連れを取り込めたことが大きい。そもそも現在、家庭で揚げ物をしなくなっている。
それに加えて、コロナ禍では休校措置や外出の自粛などがあり、家でご飯を食べる機会が増えた。
とはいえ、共働き世代も増えている中、毎日、ご飯を作るわけにはいかない。
そうした状況を受けて、お父さんやお母さんが一人で「かつや」に来店し、家族分をテイクアウトで購入するシーンが増えた。
それが客単価の上昇に繋がり、2020年のアークランドの勢いを支えたのだ。テイクアウト比率が55%だったことは、その証左に他ならない。
しかし、何も手を打たずに家族層の需要を取り込むことはできない。その需要を取り込めた要因の一つが「立地戦略」だ。
「かつや」の店舗は90%がロードサイドをはじめとした郊外にある。
コロナ禍ではテレワークの浸透などもあり、都心部やビジネス街の飲食店ほど大きな打撃を受けた。
一方で、コロナ禍でもロードサイドは好調だった。電車を使わず車で移動する層も増え、郊外型店舗がコロナ禍で生まれた新たな需要を取り込んでいったのだ。