仮想通貨取引用の口座が不正に売買された事件で、警視庁サイバー犯罪対策課は16日、いずれもベトナム国籍で無職の、自称ホアン・チュン・タン容疑者(27)=埼玉県富士見市鶴瀬東2=ら男女4人を犯罪収益移転防止法違反容疑で逮捕したと発表した。
逮捕は14日。ホアン容疑者らのグループは二つの口座を売っており、同課は事件の全容解明を進める。
逮捕容疑は昨年7月9日、東京都の仮想通貨交換業者に開設した口座を正当な理由がないにもかかわらず何者かに売ったとしている。
ホアン容疑者ら3人は否認し、1人は認めているという。
同課によると、ホアン容疑者らは昨年7月9日に2口座を開設した。
これらの口座は不正送金グループに渡り、マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用されていた。
不正送金グループは同11日ごろ、インターネットバンキングに不正アクセスし、群馬県の会社の口座から800万円を引き出した。
その後、電子決済サービス「ペイジー」を使って、ホアン容疑者らが開設した口座を含む3口座に分けて送金していた。
このうち300万円はビットコインに交換され、半分は中国の取引所に送金されたという。
■匿名性高い海外口座も
仮想通貨の急速な普及で、その取引口座が悪用され始めている。
警察庁によると、インターネットバンキングの銀行口座から仮想通貨の口座に不正送金される手口は、昨年上半期で19件(送金額約1億400万円)確認されている。
国内の主要の仮想通貨交換業者は、口座開設時に運転免許証などで本人確認を行っており、今回の事件では、こうした口座が売買されたため容疑者逮捕につながった。
しかし、海外には本人確認をせずに口座を開設できる交換所もあり、匿名性の高い口座が悪用されると追跡は困難になる。
犯罪収益の隠匿には、不正に売買された金融機関の口座が悪用され、捜査当局などは本人確認の厳格化と摘発強化を進めてきた。
だが、仮想通貨の取引口座の普及が新たな犯罪の温床になりかねず、捜査幹部は「不正送金以外にも悪用される可能性がある」と話している。
毎日新聞 2018年2月16日 13時00分
https://mainichi.jp/articles/20180216/k00/00e/040/336000c