もちろんその最大の原因は、仮想通貨取引所の大手であるコインチェック社から約580億円分の仮想通貨NEM(ネム)が何者かによって盗まれたからだ。
この史上最大規模の「仮想通貨強奪事件」では、盗まれた通貨がすでにインターネットの地下社会である「ダーク(闇)ウェブ」で他のコインに交換されるなどの動きが報じられている。事件は文字通り“闇”の中といったところだろう。
仮想通貨については、投機としてもともと関心が高まっていたが、仮想通貨そもそものメカニズムである「ブロックチェーン技術」ももてはやされていた。特に米国では、数年前から今の日本で見られるような盛り上がりが見られた。
筆者がマサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローをしていた際、MITでは、すべての学生に仮想通貨のパイオニアで代表格であるビットコイン、100ドル分が無料で提供されると発表された。2014年当時、このプロジェクトを進めていた卒業生たちは、「インターネットの黎明期に学生にインターネットへのアクセス権を与えるのに近い」と語っていた。
そんな仮想通貨ビットコインだが、いまだに多くの関係者が注目していることがある。誰がビットコインを最初に発明したのか、である。
ビットコインに関心のある人なら、ビットコインの根幹をつくったのが「サトシ・ナカモト」という人物であることはご存じだろう。ただこの「サトシ・ナカモト」が何者なのかはいまだに知られていない。個人なのか複数なのかすら、分かっていないのである。
ここ何年もの間、数々のメディアがナカモトを探しているが、いずれも失敗に終わっている。「自分がナカモトだ」と名乗り出た人たちもいたが、いずれも信ぴょう性に欠けていた。
しかし最近、ナカモトの正体を知っている人たちがいるとの話がまことしやかにささやかれている。現在、世界でナカモト探しはどんなことになっているのか。また本当にナカモトの正体を知る人は存在するのか。
正体の話に入る前に、筆者が以前、ナカモトの存在について感じていた疑問について言及したい。なぜナカモトの正体をみんなが知りたがっているのか、ということだ。
当初はこれから世界を変えるかもしれない新しい技術を開発した当人が、姿をくらましていて、名前だけが一人歩きしている謎を解く要素があった。しかも世界中で誰も当人にたどり着けないのである。
最近ではそれ以上に、人々がナカモトの“動向”を注視している理由がある。彼の所有するビットコインの量が、仮想通貨の価格に大きな影響を与えるかもしれないからだ。
ナカモトが突然姿を消したのは11年のことだ。それまで何人ものエンジニアたちと一緒にビットコインを開発していたが、「他のことをやる」というメールを仲間に送って消息を絶った。ただいなくなる前に、ナカモトは100万ビットコインをすでに手にしていたと言われている。これは全ビットコインの5%に値し、1ビットコイン=1万ドルで計算すると、100億ドルになる。
仮にナカモトが、100億ドルのビットコインを放出すれば、ビットコインは暴落することになる。それほどのパワーをナカモトは持っていて、その“動向”をリスクとして見ている人たちもいるのである。
>>2 に続きます。
2018年02月22日 07時34分 公開
ITmedia ビジネスオンライン
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