ひふみ投信シリーズのファンドマネージャー・藤野英人は指摘する。
「お金のまなびば!」は、レオス・キャピタルワークスの代表取締役会長兼社長で、ひふみ投信シリーズの
ファンドマネージャーとして知られる藤野英人氏と、お金や投資、経済について学んでいく YouTubeチャンネル。
この連載では「お金のまなびば!」から厳選した動画を元に、投資や経済に関して「日本人が知っておくべきこと」をお届けしていく。
今回取り上げる動画のテーマは、「なぜ株価は上昇しているのか」。
2021年2月、日経平均株価は3万円の大台を30年ぶりに突破した。
景気悪化や緊急事態宣言の延長など暗い話題が多いなか、株式市場だけが活性化しているのはなぜなのだろうか。
もちろん、株価の上昇には複合的な要素が絡み合っているが、藤野氏が考える要因のひとつは「通貨価値の下落」だ。
新型コロナウイルス禍による経済政策で、政府と中央銀行が盛んに資金供給を行った結果、通貨供給量は過去最高水準となった。
しかし、モノ(お金)は量が増えすぎると、その価値は低下する。「お金の価値が下がっている」と、藤野氏は言う。
株の発行量と通貨の発行量を比べると、通貨のほうが劇的に多い。
そのため、相対的に株の価値が上がっているように見えるというわけだ。
「多くの人は日経平均の上昇に対して、『これはバブルだ、株を売ろう』と考える。
しかし、売ったことにより、お金という“価値が下がっているもの“を持ってしまったことになる」
藤野氏によれば、バイオリンや高級腕時計もいま爆謄しているが、それも同じ理由。
通貨と違って数が限られており、富裕層が投資として買っているからだ。
通貨の価値が下がっているのに、バブルを警戒して株を売り、お金を手にしてしまう日本人――。
このことは、日本人の「ゆたかさ」に密接に関わる問題だという。
■株高の恩恵を受けているのは外国人投資家だけ!?
短期的な日経平均の値動きには、海外投資家の動向が大きな影響を与えると言われている。
なぜなら、海外投資家は国内投資家に比べて売買を頻繁に繰り返す傾向があり、
日本株の売買シェアの実に6~7割を占めているからだ(東京証券取引所「投資部門別売買状況」)。
2020年後半、日本株を買い続けてきたのは海外投資家と日本銀行だ。
一方、この状況を「バブル」と捉えた個人は、ほぼ一貫して保有株を売り続けている。
「日本人は、大切な資産である株式を喜んで投げ出している。
自分の身体で労働を提供して、おいしいところだけ外国人に持っていかれている」と、藤野氏は説明する。
つまり、日本人は労働対価をもらうだけの労働者に過ぎず、株高の恩恵に預かれるのは外国人だけということだ。
そもそも日本人は、株式を「資産」ではなく「博打」の対象だと考える傾向が強い。
そのため、家計の金融資産はいまだ現金・預金が半分以上を占める(日本銀行調査統計局「2020年第3四半期の資金循環<速報>」)。
「格差は政府ではなく、自分たちの行動で広げてしまっているもの。
お金をただ抱えているだけでは増えないどころか、むしろ価値が減っている。
私がいま一番懸念しているのは、見えないうちに、日本人の生活がどんどん貧乏になっていくこと」
「大量の現金を手元に抱え込む意味はまったくない」と断言する藤野氏自身の金融資産は、なんと株式の割合が95%。
気鋭のプロ投資家は、日本の株高に貧困と格差の深刻化を見て警鐘を鳴らしている。
【藤野英人(レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO)】
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20210226-00010003-newsweek-bus_all