「会社は創業者の影響や指示を受けずに自立することが重要だ」。ドーシー氏は29日、全従業員に宛てたメッセージのなかで2015年のCEO復帰以来、自らの退任時期を模索し続けてきたことを打ち明けた。
18年に発覚した米フェイスブック(現メタ)における最大8700万人分の個人情報不正流用事件をきっかけに、社会の風向きは一変。SNS企業がフェイクニュースを放置しているとの批判が強まった。こうした中でドーシー氏は21年1月、暴力を扇動する投稿が規約に違反したとして約8800万人のフォロワーを抱えていたトランプ米大統領(当時)をツイッター上から永久追放した。民主党からの批判をかわすための苦渋の決断だったが、共和党からは「行き過ぎた検閲行為だ」として反発を招いた。
ドーシー氏は従業員宛てのメッセージの中でCEO退任について「私の決断であり、私自身の問題であることを皆さんに知ってほしいと思う」と強調した。「自分のエゴよりも会社を選ぶ創業者は多くない」とも述べ、政治的な板挟みの中で対外的な説明に時間を割かれる近年の状況が自らの望むところではなかったことを示唆した。
宇宙開発に注力するベゾス氏に相似
ドーシー氏は06年のツイッターの創業を通じて、インターネットの特性であるオープンで非中央集権的なSNSの構築を目指してきた。その関心は現在、同じく分散型の技術的思想を基盤とする仮想通貨「ビットコイン」にある。7月に仮想通貨関連のイベントに登壇した際に、ドーシー氏はビットコインについて「私が子どもだったころのインターネットを思い出させる」と述べ、強い刺激を受けている様子をみせた。
マイニング(採掘)と呼ぶ計算作業を通じて消費する電力が環境負荷をもたらすビットコインの課題を解決するため、10月にはCEOを兼務してきた米決済大手スクエアを通じて電力効率の高い半導体の開発に乗り出す考えを表明した。誰もがマイニングに参加できる環境を整え、一部の業者に偏る採掘作業を分散させる構想も示した。
19年12月に米アルファベットのCEOを退任したラリー・ペイジ氏は空飛ぶ車の開発に、21年7月に米アマゾン・ドット・コムCEOを退任したジェフ・ベゾス氏は宇宙開発にそれぞれ力を入れている。自らの情熱に従って行動するドーシー氏の姿勢は、シリコンバレーの他の起業家に相通じるものだ。
ツイッター株下落、ビットコイン価格上昇
ツイッターの最高技術責任者(CTO)を経て後任CEOに就いたパラグ・アグラワル氏には規制当局への対応に加え、業績改善という難題が待ち受ける。ツイッターの1日当たりの利用者数は世界で約2億人と、グループ全体で月間約36億人の利用者数を抱えるメタと差は大きい。ツイッター株は他の米IT大手に出遅れ、20年春にはアクティビストの米エリオット・マネジメントがドーシー氏の解任要求を突きつけた。
ツイッターはその後、エリオット側が指名する取締役を受け入れることで和解し、21年2月には23年の年間売上高を20年比約2倍の75億ドル(約8500億円)以上に引き上げる3カ年の経営計画を発表した。同社の経営はすでに投資家主導となっており、アグラワル氏には計画を着実に実行する役割が期待されることになる。
エリオットは29日、「ツイッターの物語の次の章を楽しみにしている」とトップ交代を歓迎する声明を出したが、株式市場の反応はさえない。29日の米国市場でツイッター株は前週末に比べ3%下落して取引を終えた。
一方で仮想通貨への注目が一段と高まるとの期待から、ビットコインの価格は29日の取引で前日に比べ一時2%超上昇した。ドーシー氏のツイッターCEO退任は、SNSから暗号資産への技術革新の舞台の変化を印象づけた。
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