総務省が20日発表した4月の全国消費者物価指数は、前年同月比2.1%上昇と、約13年半ぶり(消費税の影響を除く)の伸び率となった。止まらない物価上昇で、家計の味方となってきた「100円ショップ」でも一部の商品を値上げしたり、販売を止めたりする動きが出始めている。原油高や円安などで原価が上昇する中、「100円均一(100均)」のビジネスモデルは限界に近づいている。(押川恵理子、写真も)
◆値上げ「生き残るため仕方ない…」
「コロナ、円安、原油高騰のトリプルパンチ。創業以来、最も厳しい」。東京都内で9店舗を展開する「イニシャル・ワンハンドレッド」(北区)の宮城武志専務は声を落とす。商品は中国産が全体の9割を占める。「円安がこれ以上進めば商品製造は止まる」とため息交じりだ。
5月に入り、プラスチック商品は仕入れ原価が3~5%上昇。現在は利幅を削って販売を続けている。売れ筋のA4サイズのクリアケースは在庫がなくなり次第、税抜き100円から200円に値上げする。ロシアのウクライナ侵攻の影響で金属資源の価格が上がり、アルミニウム製の台所用品の一部は製造中止になった。
これまで全体の1%未満だった200円以上の商品を今後は増やさざるを得ない。100円をうたう店名だけに、価格を維持したい思いもあるが、宮城専務は「生き残るためには仕方ない」と話す。
業界最大手の大創産業(広島県)でも価格維持のため、コンテナの積載効率を上げて物流コストを抑えたり、生産地を変えたり、と工夫を重ねる。広報担当者は「コスト削減で乗り切りたい」と話す。
◆客は「家計のやりくり大変」
消費者はどう受け止めているか。日用品などを購入しているという葛飾区のパート従業員女性(55)は「100円の商品が減ってきている。将来的に『100均』がなくなると困る」と漏らす。文京区の60代主婦は「多少の値上がりは仕方ないが、電気や生活必需品の値上がりが続き、家計のやりくりが大変」と嘆いた。
帝国データバンクによると、100円ショップの2021年度の国内市場(事業者売上高ベース)は根強い消費者の節約志向を背景に、前年度比5.8%増の9500億円と、成長を続けてきた。だが、この業界は海外に工場が多く、円安や原油高の影響を受けやすい。帝国データバンクの飯島大介氏は「原価がさらに高くなれば、大手でも乗り切れない業者が出てくる可能性がある」とみている。
東京新聞 2022年5月21日 06時00分
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