調査は7~9月、かつて貸与型奨学金を利用し、返還中か、返し終えた人を対象にSNS(ネット交流サービス)などを通じて尋ねた。20~30代を中心に約2700人から回答を得た。
JASSOの貸与型奨学金は2021年度時点で有利子の「2種」と無利子の「1種」を合わせ延べ約116万人が利用している。
アンケートでは、約6割が進学時に300万円以上の貸与を受けたと回答。現在は61%が正社員として働く一方で、61%は年収が300万円台以下にとどまっているとした。収入が低いため、節約しても奨学金の返還に充てることができない人も多く、全体の28%は「(返還を)延滞したことがある」、10%は「自己破産を検討したことがある」と答えた。
アンケートの自由記述では「借金(奨学金の返還)があるため、ハラスメントにあってもすぐに転職できない」「ダブルワークを余儀なくされている」と、奨学金のためキャリア選択の幅を狭められている状況を訴える内容が目立ったという。また、「1人で生きていくのに精いっぱい」などと結婚や出産を諦めたとの声もあった。「休みがなく、体の疲れがとれない」「バイト漬けで精神を病んだ」と、心身の不調を訴える回答も複数挙がった。
アンケートを実施したポッセや総合サポートユニオンなどで作る「奨学金帳消しプロジェクト」のメンバーで、元高校教員の女性(25)は、きょうだい4人で計1000万円以上の貸与を受けたという。自身は約400万円を借りて私立大へ進学。卒業後は夢だった教職に就いたが、仕事が原因で体調を崩し、1年で退職することになった。
現在は失業中で知人に借金してしのいだ時期もあった。返還のためのお金のやりくりに行き詰まり「死んでチャラにするしかない」とも考えた。女性は「奨学金は、人生を大きく変えてしまうことがある。勉強するために借金をするなんておかしい」と話した。
プロジェクトのメンバーの岩本菜々さん(23)は、学生ローン利用者の一部に対して返済を免除すると表明した米バイデン政権の政策を例に挙げながら「救済措置だけでなく、最終的には債務の帳消しが必要だ」と訴えた。