物価上昇が続く中、子育て世帯などで困窮する家庭が増えている。政府も経済対策を10月末をめどにまとめる。
対して、日銀の長年の金融緩和で株式などの資産価格が上昇した恩恵にあずかり消費意欲が旺盛な層も。
有識者は格差拡大を指摘し、消費の現場では商品やサービスの二極化が進む。
◆大学生が「今後も不安」
9月中旬の土曜日、東京都杉並区の高円寺・子ども食堂。正午になると、人が次々集まってきた。この日用意されたのは、25世帯分の弁当86食と、米や野菜など。代表の石川千明さん(84)は「これまでは約15世帯だったが、昨年8月から急に増えた」と話す。
子ども食堂は、多世代交流などの役割も果たしており、利用者はひとり親家庭以外にも、コロナ禍で収入が減った人や、病気で働けなかった人と、さまざまだ。
1人で来た男子大学生(20)は、3人兄弟の一番上。父親は入院中で「今後も物価が上がると思うので不安」と声を落とした。
日銀の「生活意識に関するアンケート調査」(6月調査)によると、現在の暮らし向きを1年前と比べ「ゆとりがなくなってきた」と答える人が56.8%に上り、2022年12月調査より3.8ポイント増えた。
◆金融資産1億円以上世帯は10年で1.8倍に
一方で、野村総合研究所の推計では、2021年の純金融資産保有額1億円以上の富裕層は148万5000世帯。この10年で1.8倍になった。同研究所の米村敏康氏は「好景気と資産価格の上昇が要因」と指摘。日銀の資金循環統計では、23年6月末時点で家計の金融資産の残高は2115兆円と過去最大を更新した。
厚生労働省が公表する格差を表す指標「ジニ係数」も広がりを示す。今年8月に公表した21年調査では、過去最大だった14年調査とほぼ同水準だった。
この数年は物価上昇も追い打ちをかけており、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介氏は「金融資産が増加している一方で(中低所得者は)生活必需品を中心とした物価上昇の影響を受け、格差は拡大している」と指摘する。
◆おせち商戦「高額商品ほど売れる」、おにぎりは値下げ
消費も二極化する。小売り現場では、高付加価値と価格重視の商品の双方を意識する。
ローソンは、今月から、おにぎりなど6品を最大20%値下げした。百貨店では、ブランド品など高額商品の売れ行きが好調。始まったおせち商戦でも、松屋銀座では、もっとも高額な商品が27万5000円。平均予算は2万3884円と前年より1777円増えるとみる。
大手百貨店担当者は「前年は高額な商品ほど売れていった」とこの冬の商戦にも期待する。
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