今回、一人娘に関するお悩みを聞かせてくれたのは、パート従業員の長谷部孝代さん(61歳・仮名)。孝代さんは40代で夫と離婚して以来、娘の美久さん(31歳・仮名)と2人で暮らしてきた。
ご自身の両親はすでに他界しているものの、近隣には伯母夫婦と叔父一家が住んでおり、心細さもなく暮らせている。しかし、30歳を過ぎた美久さんの将来については強い不安を感じているという。
「娘は会社員。大学を出てからずっと同じ会社に勤めています。今の彼氏とは本当にうまく行っていて、幸せそうです。歴代の彼はたぶんほとんど紹介されていますが、今までで一番お似合いだと思っています」
現在、美久さんには交際4年目の彼がいる。彼氏は孝代さんと美久さんが暮らす家にも日常的に訪れており、孝代さんはおろか、近所に住む伯母や叔父ともすでに気心知れた仲だ。
孝代さんは、母と娘のよくある会話、といった感じである日の食卓で結婚について訊ねてみたそうだ。
「今の彼氏と結婚したいと思わないの?と聞いたんですね、世間話のような軽い感じでですよ。すると美久は『なんでわざわざそんな面倒しょい込む必要があるの?』と言って鳩が豆鉄砲くらったような顔をしたんです」
つき合っていて何の不満も不足もないのに、なぜわざわざ入籍したり姓を変えたり、高いお金を使って新たに住まいを用意したりしなければならないのか、本当にわからないと娘は言った。
「それに、わざわざ一緒に住んでどちらがどの家事をいつやるとか、お金をどうやって使うとか話し合うのもウザい。それに、業務のように家事をやるなんてあり得ない、と言うんです。まあ、今はお互いに実家で家事も親にやらせて、お金も自分で稼いだものはあらかた自分のものになって、何のストレスもありませんから、彼らがそう思うのも無理はないかもしれませんけど、それでも昔の感覚だと、親から独立して所帯を持ちたい…となりますよね」
孝代さんは娘に対し、いつか子供が欲しいとは思わないのか、とも聞いてみた。これは結構本気で聞いてみたい質問だった。
「飄々とした感じで娘は『いらね~』と答えました。自分と出産が全く無関係なものだと思っているかのような表情でした」
「こんな世の中で子供産んで、どうやって幸せになれっていうの、と娘は言っていました。子供が減って、将来国民1人ずつにかかる負担は今よりさらに大きくなることも目に見えているし、国が軍事費を増やしたりミサイルが飛び交ったりしているなかで、もし他国のように徴兵制でも始まろうものなら、かわいいわが子を軍隊に行かせなければならないのよ、と真顔で言うんです。軍隊だなんて……そんなふうに考えているとは、正直驚きました。私はそんなこと、考えたこともありません」
孝代さんは1人娘が今後どんな人生を送るのか、想像するたびに不安が押し寄せてしまう。少子化うんぬんの前に、若い世代が「今さえ楽しければいい」という考えに陥って無気力化してしまわないか、とても心配だと言って孝代さんは肩を落とした。
(抜粋)
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