■戦前は女性が40代での出産が普通にあった
【海老原】実は40代になると子どもが産めなくなるという話は戦前にはありませんでした。40代の出生率(合計特殊出産率ではなく、年齢別出生数から算出した単純出生率)は、1925年だと0.4強、終戦直後でも0.3近くありました。それが1948~1960年のたった12年間に急減少し、「40代は産まない」が常識化していきます。
■人生に奥行きが持てる
【海老原】こうした話をすると、「でも、高齢だと障害発生確率が高まる」という不安を耳にしますね。確かにそれは事実でしょうが、40歳だとダウン症児の生まれる確率がまるで2人に1人のように勘違いされています。現実は、40歳出産で89人に1人、45歳だと24人に1人です。先ほどの妊孕力の件も、この障害発生の話も、いたずらに不安をあおるのではなく、こうした現実のデータをしっかり伝えることも重要でしょう。もちろんそれで終えず、対策や心の準備なども用意し、全部を知った上で、最善の選択肢を取れるようにしていけば、「30歳過ぎたら諦めた」「三十路女性は賞味期限切れだ」と考える人は少なくなっていくのではないでしょうか。
「30歳までに産め」と強調するのではなく、こうした形で、女性の出産適齢期を伸ばし、人生に「奥行き」を広げてもらうことが必要だと考えています。
■自分より条件のいい男性を選ぶ女性たちは相手が見つかりにくい
【海老原】昭和の頃であれば、女性は高卒・短卒が主で、仕事も事務などのサポート職が一般的でした。当然、大卒・総合職が多い男性と比べれば、多くの女性は学歴・職歴ともに劣ることになり、ゆえに、「周りを見渡せば、自分より条件が良い男性」がゴロゴロしていたわけです。ところが、学歴・職歴がどんどん男女平等化し、収入面でも近づいている昨今では、女性にとって「自分より条件の良い」男性は必然、少なくなっています。当然、昔の意識のままでは、相手が見つかりにくくなるわけです。
出生動向調査を見ると、女性が男性に求める要素としては、「経済力」が高位安定していて、1992年の88.7%だったものが、2021年には91.6%とさらに上昇しています。「職業」も同様で、77.9%から80.7%に。「学歴」は54.6%から51.7%と少々下がっていますが、男性が女性に「学歴」を求める割合(20%台)と比べると、各段に高くなっています。
■なぜ低学歴・低年収の男性は受け入れられないのか
【海老原】ネットには典型的な投稿が多々見られます。30代後半の女性で、結婚相手のことを親に話したら、「相手の学歴が自分より下」「サラリーマンではない」といった理由で、会う前から否定されたといった。これ、女性の問題ではなく、社会の問題だと思うんです。
高年収の女性が、低年収の男性と結婚したとしても、彼が家事育児の大半を担ってくれる可能性は高くありません。だから、女性は仕事を今まで通りに続けられない可能性が高い。仮に、もしそんな「髪結いの亭主」でも良いと考えたとしても、今度は、世間の理解が得られないでしょう。こうした問題が錯綜し、それが親兄弟・友人などの心で増幅され、未婚女性に向かってくるわけです。
「昭和の心」は色濃く残る。そしてその裏には、女性にとっての不都合がまだまだ残っている。時間はかかるけれど、そこをしっかり正していくべきだと、強く思っています。
■男女の収入差がある社会で、相手に稼ぎを求めるのは当然
【権丈】男女の収入差があり、男性の魅力の一つとして稼ぎが重要だと判断しますので、そうした点があるのは不思議ではないと思います。
20歳の頃に目の前の状況に最適な選択が、時代の変化の中で時代遅れになり、人生を後悔しなくてもすむように、自分で考えていく。それが今、一番大切なことだと思います。そして私たちは、政策的に、そうした生き方を社会からサポートしていく。それも大切なことですね。(抜粋)
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