これは27日、県内で路線バスや鉄道を運行する九州産交バス、産交バス、熊本電鉄と熊本バス、それに熊本都市バスの5つの事業者でつくる「共同経営推進室」が会見で発表しました。
それによりますと、運賃の支払いに使われる全国交通系ICカードに対応する機器の更新時期が迫り、検討を進めた結果、更新にかかるコストが大きいことなどから、年内にも廃止することを決めたということです。
コストが半分程度に抑えられるとして、今年度中にクレジットカードなどのタッチ決済に対応する機器を導入する方針だとしています。
一方、現金での支払いや地域限定型の交通系ICカード「くまモンのICカード」は、継続して利用できるということです。
共同経営推進室によりますと、2023年度の路線バスと電車の利用者のうち、「くまモンのICカード」は51%、全国交通系ICカードは24%を占めていたということです。
機器の更新はバスと電車、あわせておよそ900台で行われるということです。
共同経営推進室では交通事業者が全国交通系ICカードによる決済を導入し、その後廃止するケースは聞いたことがないとしています。
共同経営推進室の高田晋室長は「利用者の方にはご不便をかけることがあると思いますが、理解して頂けるよう丁寧に周知していきたい」と話していました。
全国交通系ICカードは熊本市内を走る市電でも廃止されます。
これは、熊本市の大西市長が28日の定例記者会見で明らかにしました。
それによりますと、熊本市電では再来年、2026年の4月から全国交通系ICカードを廃止します。
全国交通系ICカードの使用割合は路線バスなどでは24%である一方、熊本市電では半数を占めています。
バスなどより使用割合が高い全国交通系ICカードを廃止する理由として市側は運賃の支払いの手段を統一することや、将来にわたって機器の更新にかかる費用負担などを考慮したとしています。
熊本市電では、クレジットカードのタッチ決済やQRコード決済などがすでに導入されています。
大西市長は「利用者が混乱しないようバス事業者と一緒に周知に取り組みたい」と述べました。
背景には厳しい経営状況
今回、5つの交通事業者が、運賃の決済手段のうち全国交通系ICカードを年内にも廃止する方針を決めた背景には、各社の厳しい経営状況があります。
交通5社でつくる「共同経営推進室」によりますと、路線バスや電車に関わる事業の去年9月までの1年間の経常収支は、5社で合わせて39億円余りの赤字となっているということです。
更新の時期が迫った、全国交通系ICカードのシステムを継続した場合、5社全体でかかる費用はおよそ12億1000万円。
この費用は、8年前のシステム導入時にかかった分のおよそ1.5倍にのぼるということです。
一方、クレジットカードなどのタッチ決済に対応する機器を新たに導入した場合は、費用は半分程度の6億7000万円余りに抑えられるということです。
また「共同経営推進室」によりますと、国の補助の対象となるのは新規の事業に限られ、継続事業は対象とならないため、システムの更新を選んだ場合、負担が大きくなるということです。
こうした状況から「共同経営推進室」は全国交通系ICカードによる決済の廃止を決めたとしています。