ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。
対面販売ではなくとも、地域の商圏縮小の影響を直接受ける業種がある。会社名に都道府県名を冠した「ご当地企業」である。
代表的なのは地方銀行やカーディーラーのように地区割りされた各種の販売代理店だ。広い意味では地方国立大学なども該当しよう。一部には東京圏などでの展開に活路を見出そうとしているところもあるが、営業の主柱はご当地の都道府県であることに変わりはない。人口が増えていた時代には、県外のライバル企業の攻勢を受けることもなくメリットが上回っていたが、今となっては都道府県人口の減少がそのまま販売数や利用者数の減少を意味する。
地方銀行の苦悩ぶりは広く知られるようになったが、大変厳しい経営環境に置かれているのはローカルメディアも同じだ。
地方新聞社(地方紙)では、すでに廃刊・休刊や、夕刊の撤退が相次いでいる。当該県人口の減少は販売部数の減少を招くだけではない。地方紙に広告を出す地元企業も減少する。地方紙にとっては広告収入やイベント開催などによる営業収入の減少も深刻なのだ。新たな収入源を確保すべく、ほとんどの新聞社が本来の新聞発行とは無縁の事業に乗り出し、経営の多角化を図っている。
さらに危機的なのは若い世代が、新聞という媒体を手にする機会が減ってきていることだ。
少子化で若者が減るという以前に、「新聞」そのものが必要とされなくなってきているのである。「長年の習慣」として宅配購読を続けている世代が亡くなったり、介護施設に入ったりすると部数の減少は急加速するだろう。
地方紙の減少は全国規模で新聞発行を行う新聞社(全国紙)や複数県に発行する新聞社(ブロック紙)にも影響する。地方の場合、地方紙と全国紙かブロック紙を併読している人が多いためだ。しかも、地方紙の新聞販売店が全国紙を配達しているケースもある。地方紙を購読しなくなれば、必然的に全国紙やブロック紙の購読もやめることになる。地方紙の激減とは、“全国紙消滅”へのファーストステップでもある。
地方のテレビ会社(ローカルテレビ局)も地方紙と同様に県内人口の減少に苦しんでいる。テレビ業界というと華やかなイメージを持ちがちだが、ローカルテレビ局の現状は決して楽ではない。
インターネットが社会インフラとして定着し、ユーチューブなどで誰もが“Myテレビ局”を開設できるようになり“テレビ離れ”は進んだ。映画などのサブスクリプションサービスも定着して、いまや映像情報は日常に溢れに溢れている。早送りしながら見るという「倍速視聴」という言葉が話題となっているが、映像を選べる時代となってお仕着せのプログラムで放送するテレビを見ない人が増えている。
テレビの場合、さまざまな年代を対象にせざるを得ないこともあって、新聞と同じく若者を中心とした“テレビ離れ”が著しくなっている。見たくなる番組が限られているためだ。
それは会社全体の収支の悪化となって現れる。総務省の資料によれば、全国114局のローカルテレビ局の売上高は、2014年度の約7055億円から、2020年度には約5933億円に落ち込んだ。単純に平均すれば、1局あたり約10億円の減収である。営業利益は2014年度の約575億円から2020年度には約165億円に落ち込み、1社あたり約5億円から1億円ほどになった。
ローカルテレビ局は、地元の有力企業やキー局、新聞社の資本が多く投入され、それらとの深い結びつきによって成り立っているため、現時点で相次いで倒産するといった事態に追い込まれているわけではない。
しかも、キー局が作った番組をローカル局が放送すると、その番組のスポンサーがキー局に支払ったCM費の一部を得られる仕組みとなっている。キー局にとってローカルテレビ局は全国ネットークの生命線であるためだ。
だが、先述したようにインターネットや動画配信の普及などによって娯楽が多様化しており、キー局も収入減少や視聴率の低下に悪戦苦闘している。今後はキー局の広告収入のさらなる落ち込みが予想される。
数年以内に債務超過に陥るローカル局が出かねないとの見方もある。(抜粋)
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